2009年11月18日水曜日

なぜ日本の会社は「働きがい」がないのか

プレジデント10月12日(月) 10時 0分配信 / 経済 - 経済総合


4種の従業員価値

■「働きやすさ」とは、「働きがい」と何が違うのか

「働きがいのある会社」という考え方が話題になってきている。私自身も、従業員の働きがいを高めようとする人事部の方々や、働きがいのある企業を評価したり、ランキングしたりする仕組みを開発しようとする団体の方々から相談を受けることもある。

良いことだと思う。企業というものが人で成り立っている以上、また人は企業に採用されるだけで優れた経営資源に変身するのではない以上(つまり、人という資源は意思をもった存在である以上)、働きがいのある企業で、人はより良い資源となるだろう。企業の実例を見ても、働きがいと企業の競争力は正の相関関係があるようだ。また実感とも合致する。
また、企業だけではなく、働く人もより幸せだろう。多くの人が企業や組織という場で生活の糧を得ながら人生をおくる、というのが現実である以上、その場で働きがいを感じられるほうが、そうでないよりも幸せである。

もちろん、相対的に職場や会社で一番生きがいを感じるかは別問題だ。そうではないと主張する人も増えてきた。でも、人生のうち多くの時間を過ごす場であるから、やはりそこにポジティブな価値を見出したい。

また、働きがいと同様に今、関心が高まっている概念に「働きやすさ」がある。特にワークライフバランスや長時間労働が話題になるにしたがって、多くの企業が関心をもっているようだ。
働きやすさとは働きがいと何が違うのか。私は、働きがいが、人材を前へ前へと押し出す力だとしたら、働きやすさは、それを阻害する要因を取り除くことだと考えている。
 
キャリアの今の段階で子育てに専念しておいて、子供がある程度手がかからなくなったら、再びキャリアに専念する。働く人が、実質的にこうしたバランスを選択できる仕組みは、長期的な意味で、働きやすい職場を提供する。また、こうした企業は働きがいもあるだろう。逆に、両方とも中途半端にしか実現できないような職場は働きにくいし、働きがいもない。

実際、今、企業経営のなかで、働きやすさと働きがいの両方を徹底して追求することで競争力を確保する企業も出てきている。話題になる例でいえば、グーグルやマイクロソフト、SASインスティチュート(アメリカの計算用ソフト会社)などのIT企業の一部である。チャレンジしがいのある仕事や、厳しい成果主義と公正な評価を通じて、働きがいを提供し、同時に極めて厚い福利厚生でそうした成果達成への阻害要因を減らす。長期の休暇や徹底した裁量労働制、社内の豪華カフェテリアやフィットネス施設などがしばしば紹介される。

■働く人の視点から企業への評価が進んでいる米国

働きがいと働きやすさは表裏一体のものなのである。どちらか一方ではない。働きがいを追求するためには、働きやすさを提供しなくてはならないし、また働きやすさを提供しても、働きがいがなければ、ただの“従業員に優しい会社”である。既存の“働きがいが高い”企業ランキングを見て、しばしば首を傾げてしまうのは、働きやすさに特化した評価の仕組みになっているからだろう。

でも、いったいなぜ今になって多くの企業人や働く人が、働きがいに関心をもち始めたのだろうか。そのことを考えるために、働きがいや働きやすさの視点から企業や職場を評価することの意義を少し考えてみよう。

働きがいにしても、働きやすさにしても、共通しているのは、それが企業や職場の、働く人の視点からの評価であるということだ。その意味でこれまでの企業評価とは大きく異なる。
いうまでもないことだが、通常の企業評価は、経営の視点、または株主視点からの評価であり、その意味で、働く人による評価の要素は入ったとしても、あくまでも経営視点からの評価の一部である。最近話題になっている無形資産会計における人的資本なども人材の能力や技能の価値などに注目する。視点は経営である。
したがって、働きがいや働きやすさ(総称して仮に、従業員にとっての企業の価値という意味で、従業員価値と呼ぼう)を評価するということは、ステークホールダーとしての働く人の視点に立った評価だともいえる。株主が企業を株主価値という視点から評価し、投資先を選択するように、働く人が企業を評価し、自分の知的資本を投下する。そうした比喩も可能かもしれない。株式市場が効率的に運営されるための情報開示と同じで、人的資本が効率的に投下されるための情報開示だといってもよい。
つまり、従業員価値によって企業を評価することは、まず働く人がどこに自分の知的資本を投下するかどうかを考える意味で重要なのである。そのため、労働市場が流動化し、働く人が選択権をもち、選択のための情報が必要な社会では価値が高い。実際、日本よりも労働市場の流動化の進んでいる米国では、こうした評価や、それに基づくランキングは以前から進んでおり、数も多い。
これまでの日本では、働く人は働く場所をあまり自由に選べなかった。株式市場の流動化の速度に比べて労働市場の流動化は遅れていた。確かに、長期雇用でロックインされている場合、働く会社の選択は難しい。でも、ここしばらく労働市場全体で見れば、かなり流動化は進んできた。

さらに考えてみてほしい。やや荒唐無稽かもしれないが、働く人は、雇用を継続しながら、知的資本を投下しない選択肢もあるのである。投下する量や質を減らす場合もあるかもしれない。平易な言い方をすれば、一所懸命に働かないという選択である。
そうしたときに働く人から、高いレベルの努力を引き出すには多くのコストがかかる。やりがいが感じられない仕事をしている従業員をモチベートする難しさを思い浮かべていただければよい。このような状況は、特に長期雇用で人材が確保されている場合に発生しやすいコストである。
従業員視点からの評価を気にすることは重要なのである。働く人にとっては、進む雇用流動化のなかで、自分で働く場所を選択するという可能性が高くなる。そのときに自分の知的資本が最も大きなリターンを生む場面を選択するための基礎情報である。
また、経営にとっては、経営資源としての人的資本が効果的に調達され、活用されているかを知るための情報なのである。特に経営者が、従業員価値の実態を知らない場合は、経営を律する一つの情報である。

では、いったいどのような企業で従業員価値が高いといえるのだろうか。すでに述べたように、従業員価値を評価し、またランキングまで結びつける努力は、主に米国発で多くなされているが、なかでも老舗は、Great Place to Work(R) Instituteの考え方である。最近、日本でもそれを応用したモデルで日本でのベスト25社を選ぶ試みが行われている。

■従業員価値を決める五つの軸とは

このモデルによるとベスト25社とそうでない企業を分ける基本軸は五つあり、信用、尊敬、公正、誇り、連帯感であると主張される。簡単に紹介すると、
(1)信用とは、従業員が責任ある仕事を任されている
(2)尊敬とは、仕事を行うために必要なものが与えられている
(3)公正とは、学歴や人種などに関係なく、公正に扱われている
(4)誇りとは、自分たちが成し遂げている仕事を誇りに思う。この会社で働いていることを胸を張って人に伝える
(5)連帯感とは、この会社は入社した人を歓迎する雰囲気があるというような内容である。
なお、5軸は、大量の質問項目を回答者に提示し、そのなかから総合的に良いと判断される企業とそうでない企業を弁別するのに効果的な文章(良い企業と多数が肯定的に答えた文章)を選んで作成したものである。Great Place to Work(R) Instituteは、同様の仕組みを全世界40カ国以上で展開し、ある意味では、従業員価値評価のグローバルスタンダードになろうとしている。詳しくは、斎藤智文著『働きがいのある会社 日本におけるベスト25』(労務行政)を参照してほしい。または、Great Place to Work(R) Institute JapanのHPでもよい。

わが国の場合、どうなのだろうか。このコラムでも何度も強調しているように、私はわが国の雇用モデルの強みの源泉は、その長期性にあると考える。それも、いわゆる高業績のハイパフォーマーだけではなく、中間層の人材まで含めて、ある程度長期に雇用され、それによって文化や価値観が共有され、内部のコミュニケーションのコストが低くなり、チームや組織が強くなることで、日本の企業は競争力を獲得してきたと考えている。

■人材が流出する可能性をいかに食い止めるか

もちろん、このモデルだけが唯一の方式ではない。他の方式もあるだろう。でも、わが国の制度や歴史、文化的背景と整合的なモデルだと思っている。また、働く人も長期的な雇用を求める傾向が強いと考えられる。
したがって、経営としての課題は、流動化し、働く人の選択権が高まるなかで、こうした長期性をどうやって維持していくかにある。ここでいう長期とは、理論的に言えば、何回も繰り返される選択の集積である。一回ごとの選択で外部へ流れる可能性のある人材が、そのたびごとに自社を選択してくれる状況をどうつくり出すか、という課題だともいえる。

これが長期雇用の一つのとらえ方であり、すべてがこのモデルにいきつくわけではないが、労働市場の流動化や働く人の意識の変化など、このモデルで考えるのに適合的な要因が増加しているのも事実だろう。高業績者についても、それ以外の人材についても、ほぼ同様だ。選択の意識は強まっている。そして、残る選択をするときに、望ましい選択をしたという意識がない場合、雇用は継続しても、知的投資のレベルを下げるということも十分考えられるのである。そうした状況では、従業員価値を測り、理解することは重要な経営課題となる。
したがって、私は日本の場合(というか、おそらく他の国でも)、現在顕在化した価値だけではなく、未来への期待を要素として含んだ概念で、従業員価値を評価する必要があるのではないかと考える。つまり、未来への期待を原動力に、今残ることを選択するというストーリーである。中核的なものとして、働きがい要素としては、「人材としての成長」や「達成感」、また、働きやすさ要素としては、「人生の展開に合わせた選択の可能性」や「公正に扱われること」などである。まだまだ仕掛品だが、図に示しておいた。

いずれにしても、こうした従業員価値を把握する試みは、新たな組織と人との関係のなかで重要な要素となる。もちろん、すべての企業で、コストのかかるアンケート調査などをする必要はないかもしれないが、経営者として、働く者として、その企業が従業員にとってもつ価値を知ることは、ますます重要になるだろう。

モットーは全員経営

 独り勝ち”の理由は
柳井 やはり全部自分でやっているから。顧客ニーズがどこにあり、どういう商品を企画し、どのように売るか。販売後にお客さんがどんな感想を持ち、どこを改善してほしいと感じているかを常に把握する。このサイクルがきちんと回っています。
優秀な店長は年収1000万円超だそうですね
柳井 これは単なる人事制度ではなく企業哲学で、うちのモットーは全員経営。特に小売りは、お客さんと接する現場で正しい判断や行動が必要です。今日採用されたアルバイトでも、正しい判断をするには経営者感覚が必要になります。

 ご自身の体験から?
柳井 昭和47年に父親の紳士服店に入社したさい、僕は2代目で生意気だったので1人を残して全員辞めてしまい、全部1人でやるはめになった。このとき商売は1人では何もできないと痛感した。また、山口県の零細企業からここまで大きくなったのも私の力だけではない。だから、特に社員がどれだけ力になってくれるかが経営を左右する。特にわれわれの場合は売り場の責任者である店長が一番のパートナーです。

経営幹部を養成する人材育成機関を新設しました
柳井 人間は必ず老化するし、トップが老化したら企業もダメになる。だから、65歳までに日常業務は他の人に任せたい。2人の息子には経営は他人に譲ることを伝えている。ただ、僕は創業者で大株主なので会社と完全に無関係になるのは難しいから、人材育成に専念できればと作りました。

後継者の条件は?
柳井 お客さまの満足のために仕事ができて、もうけられる人。もうけの話をすると、「ユニクロは関西商法ですか」と言われるけれど(笑)、もうけないと会社の将来はないのだから当然です。収益を確保しながら常に新しいことに挑戦していかなければ、今後のグローバル経済の中で企業は生き残れない。今後も攻めの姿勢を忘れずに世界一を目指したいですね

稀代の話術者、スティーブ・ジョブズ氏のプレゼンテーションの秘密Best7





米国大手コンピューター会社Appleの最高責任者であるスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏は、“プレゼンテーションの達人”として世界中から高い評価を得ている人物だ。彼のプレゼンテーションは、聞く者を魅了し、感動させる。


そんなジョブズ氏の巧みなプレゼン術の秘密Best7を、コミュニケーションの専門家であるカーマイン・ガロ氏が自身の著書『The Presentation Secrets of Steve Jobs』をもとに、ワシントンポスト紙で紹介した。最高のストーリーテラーとして名高い彼のテクニックを知ることで、会社でも日常生活でも活用できる“人々を引き付ける話術”が身に付くのではないだろうか。


【スティーブ・ジョブズ氏のプレゼンの秘密】
1.製品ではなく夢を売れ
ジョブズ氏は「私の使命は宇宙に凹みを作り、世界を変えることだ」と話す。彼は2001年にアイポッド(ipod)を売り出したときも、ただの音楽プレーヤーではなく人々の生活を豊かにするための道具として見ていた。素晴らしい製品はもちろんだが、それに対する情熱、熱中そして感動も同じぐらい必要だ。


2.宣伝文句はTwitterのように簡潔に
ジョブズ氏は、新製品にはすべての製品にキャッチコピーを付けるように依頼する。それらはすべて、140文字以内の短文を交換し合うSNS「ツイッター(Twitter)」にも投稿できるほど短くて簡潔だ。例えば2008年1月に発売されたマックブック・エアー(Mac Book Air)の宣伝文句は「世界最薄のノートブック(the world’s thinnest notebook)」。詳細が知りたければ、AppleのHPにいくらでも載っているのだ。


3.宿敵を紹介せよ
ほとんどの古典小説では英雄が悪者と戦うが、同じ構図がジョブズ氏のプレゼンにもある。1984年の宿敵は“IBM”だった。Appleが初めて家庭用パソコンを売り出した際の有名なテレビCM「1984」を販売員らに披露する前に、彼はドラマティックな話を創作し「IBMはすべてを欲しがっている」と言った。ブランディングの専門家であるマーチン・リンストローム(Martin Lindstrom)氏によると、偉大なブランドや宗教は打ち破るべき敵などの共通認識を持っているという。英雄の周囲を活気づかせるためには、誰もが認めるライバルを創り上げることが重要だ。


4.“3の法則”を守るべし
神経科学者によると、人間の脳が一度に受け入れることができる情報は3~4つ程度だという。ジョブズ氏のプレゼンテーションもまた、常に3つのパートに分けて進められる。2007年1月、彼はアイポッドと電話、インターネット検索の3つの機能を備えた新しい製品を紹介し、聴衆を驚かせた。「3つの製品を持つのではなく、1つの製品が3つの機能を兼ね備えている。我々はこれをアイフォン(iPhone)と名付けた」。


5.簡素化するために努力せよ
Appleの製品はユーザーが混乱しないように、そして簡単に使えるように作られている。そして同じ哲学にもとづき、マーケティングと販売戦略が立てられている。プレゼンの際に使われるKeynoteの1ページに書かれている文字数は平均40文字程度。また、ジョブズ氏が使うものに至っては、写真とイメージが多く文字が少ない。マーケティングの専門家は2010年のキーワードを「簡素化」だというが、ジョブズ氏は1976年からそれを教訓にして来た。


6.驚きの瞬間を演出せよ
驚きの瞬間が用意されているのも、ジョブズ氏のプレゼンテーションの特徴である。マックブック・エアーを発表したときも、一般の会社で使われているような封筒からパソコンと取りだして聴衆を驚かせた。今もこの時の話が語り継がれているように、何か1つ記憶に残る演出を取り入れよう。



7.舞台を共有すること
ジョブズ氏は、主要な発表の場で必ずパートナーたちを紹介する。もし、パートナーが来場できない場合はビデオなどで紹介することもある。顧客は多様性を求めているため“一人舞台”ではなく、チームで仕事をしているとアピールすることが必要である。